獣医さんの電子工作とパソコン研究室
 
 43.リチウムイオン電池の充電(2セル直列の場合) 
 

 

 ■ 2セル直列のリチウムイオン電池を充電する。
 以前、1セルのLi-ion電池の充電についてはこちらのページで紹介しました。現在でもまだ健在で使用しております。今度は、2セル直列のLi-ion電池を充電したいと思い、専用ICを使うことで簡単に実現しましたので報告します。
 なぜ、2セルのLi-ion電池を充電したいかというと、リチウムイオン電池1個の電圧は平均3.6Vですので、2セル直列で7.2Vの電圧を得られます。また、容量の割に形状が小さくて済みます。
7.2VのNi-Cd、Ni-Mhバッテリーを使っている機器が身の回りにいくつかあったので、それをLi-ionバッテリーに置き換えたらと考えたわけです。
 ワンチップマイコン(5V)の組み込み電源として使えば、かなり長時間の動作も可能ではないでしょうか。小電流機器だったら、ノートパソコンから取り出したリチウムイオンバッテリーでも充分使えると思います。
  
★ご注意 
 リチウムイオン電池の充電について、あくまでも実験のレポートです。 
 充電には危険を伴いますのでご注意ください。  

 
 ■ 充電専用IC
 各社で充電用の専用ICが数多くありますが、その中でもリニア・テクノロジー社のものを選びました。
2セルの充電ができ、リニア式ですので特殊な部品もいらず、簡単な回路でリチウムイオン電池の充電を実現できます。 購入は、日本国内では無理そうでしたのでDigi-Keyを利用しました。便利ですね。
 
 LTC1731-8.2 
特長
●2セル・リチウムイオン・バッテリ用の完全なリニア・チャージャ・コントローラ
●プログラム可能な充電電流、C/10の充電電流検出出力、プログラム可能な充電終了タイマ
●入力電源除去時の自動スリープ・モード(バッテリ流出は15μA)
●低電圧セルの自動トリクル充電
●定電流専用モードにプログラム可能 (NiMhなどの充電にも使えます)
 
詳細はデータシートを参照ください。  リニアテクノロジーサイト・・・LTC1731データシート(pdf)
 
 ■ 実際の製作の様子 その1 <電動ドリル編>
 最初に作ったのは、10年くらい前のマキタのバッテリー式の電気ドリル(Makita 6176D)への応用でした、既にこのドリルは一度NiCdバッテリーを交換していましたが、それも駄目になって、使われなくなっていたものです。このドリルは日本で購入したものですが、Makita Corp. of America となっています。
 今回購入したものは LTC1731EMS-8.2 というタイプのもので、8ピンMSOPパッケージです。
こちらは、秋月のTSOP8(0.65mm)DIP変換基板に適合しますので、こちらを利用してユニバーサル基板に実装しました。右下写真のように、かなり小型に作ることができます。
 とりあえず、何も考えずにデータシートどうりのものを作って実験してみました。
データシートには充電電流値や充電停止時間についての詳しい解説(英語)がありますので、ご参照ください。
↑実際の回路図
バッテリーは若松通商で販売していた新古品のUS18650GR 3.6V/2200mA TOSHIBA を使用しました。
これまでついていたNiCdバッテリーより小さくて高容量です。
 
充電は、外部に9VのACアダプタ(秋月のスイッチングタイプ)を使用しました。


 
↑実際の実装状態→
 このドリルは無段階変速のコントローラーを内蔵しているタイプです、写真丸部分にFETと思われる3端子の素子が見られ、上側の金属部分で放熱するようになっています。
 モーターは無負荷で1.5A程度流れています。負荷をかけると3A以上流れます。
 
 DCジャックの改造 
 実は、上の写真は2台目の充電回路なのです、1台目は直接バッテリーに充電回路がつながっている形で、コントローラー前の逆流防止ダイオードもつけていなかったため、ICが壊れてしまいました。
そこで、充電時以外は充電部を切離すように考えました。切離すためには、DCジャックを差し込んだ時に接触する接点が必要だったのですが、どのDCジャックも、プラグを差し込むと接点が切れるタイプしかなかったので、大昔にどこかの製作雑誌でイヤホンジャックの接点を改造してスイッチ代わりにしていたのを思い出し、DCジャックもトライしてみました。
  
写真左:動かない部分の接点を下側に穴をあけて移動したところ。
写真中:最初にルーターで側面を削って、中の様子を確認。これは改造後です。
写真右:プラグを挿入し、接点が接触しているところ。
 このような改造をしても、プラグが差し込まれていると充電回路がバッテリー、モーターと並列につながっている状態になりますので、モーターが回りはじめる一瞬チャージLEDが点灯します。(これ以上は、壊れると嫌なので試していません、なぜLEDが点灯するのかわかりません) 
 LTC1731-8.4を使って充電部からバッテリーの間にダイオードを入れればよいのかもしれません。
  
 ■ 充電特性の測定と考察  
測定は、外部の電源(9VのスイッチングタイプACアダプタ)からの電流をMETEXのテスタで測定し、
1分ごとのデータを記録したものです。ほぼ、充電電流を示していると考えられます。
グラフ 1(テスタ-20Aレンジ)
最初は、バッテリ電圧が4V程度しかありませんでした。モーターがどうにか回る程度です。

完全に放電したセルに対しては、バッテリ電圧が4.95Vを超えるまでプログラムされた電流の10%で自動トリクル充電を行うようですが、
実験で数回接続状態になっていたので、このグラフでは最初から500mA流れています。
 
2時間20分の時点で、電流計は0になりました。タイマによる充電終止です。
グラフ 2(テスタ-20Aレンジ)
グラフ1での充電が終了した後、数分モーターを回してから、再度充電し始めた時のグラフです。
 
2時間30分後には電流計が0になりました。
 
グラフ 3(テスタ-20Aレンジ)
グラフ2での充電が終了したあと、数分モーターを回してから、再度充電し始めた時のグラフです。
 
今度は、あまり電流が流れていません。
今回は3時間で電流計が0を示しました。
 
ほぼ、満充電というところでしょう。
グラフ 4(テスタ-400mAレンジ)
グラフ3での充電が終了したあと、数分モーターを回してから、再度充電し始めた時のグラフです。
 
さすがに、あまり電流が流れていません。
今回は3時間で電流計が1.01mAを示し、以後も約1mA流れていました。
 こうみると、このリチウムイオンバッテリーの場合は、かなりの放電状態になっていると、3時間では充分に充電されていないということになります。 
 データシートの充電特性は、400mA/hのバッテリーでの結果ですので、当然2200mA/hのバッテリーでは充電時間が足りません。 R-progを変更して充電電流を多くするか、終止タイマーの時間を決めているC-timerを大きくすることで放電状態でも充分な充電がされると思います。(データシートには C-timerは30時間/μFと記載されています)
 
 9Vの電源で、充電電流500mA程度流れている時でもFETの発熱はそれほどでもなかったので、内蔵型とするにはこのあたりの電流で、時間を長くしたほうが良いと思われます。
外部に充電部を持ってきて、センス抵抗の耐圧を上げ、FETにはヒートシンクも装備し、もう少し電流を流せるようにすれば、満充電までの時間は短くできると思います。
 
 グラフ1〜3では、定期的に電流が多く流れているのが伺われます。テスタの400mAレンジではこの傾向が見られなかったため、テスタの問題か、データロガー側の問題かもしれません???
 ■ 実際の製作の様子 その2 <スティク掃除機編>
    こちらは、ナショナルのスティク型コードレス掃除機(BH-623)です。これも、10年以上使っていますが、途中1回バッテリーを交換しています。専用の充電台(BVK1110)にセットし、保管時に充電しておくタイプです。
 充電台の中は写真のように、かなりしっかりした充電コントロール部となっています。裏側には 7.6V 310mAと書いてあります。

使われているICはμPD17107CX(4ビットマイクロコントローラー)、LM393(コンパレーター)、NJM78LR05DD(レギュレーター)です。
 
充電専用ICではなく、マイクロコントローラーで制御しているようです。

 充電台についていたトランス(11.5V×2)はそのまま使おうかと思ったのですが、整流して500mAの負荷テストをしてみたところ13Vの出力になっていましたので、LTC1731のデータシートにある最大入力電圧を超えています。そのためACアダプタより取り出したもので、高さが一緒のものがジャンク箱にありましたので、これを使いました。
 このトランスは、ブリッジダイオード+1000μF整流後、無負荷で12.5V、500mA負荷で9.65Vを示していました。
↓組み込んだところです。  ↑回路図です。
  
 スイッチ部分も、単純にモーターのON/OFFのみでしたが、接点が余っていたので、OFF時のみ充電回路側に接続されるようにしました。マイクロスイッチを使っていたりするところも豪華な設計ですね。
 
 ■ 充電特性の測定と考察  
グラフ 1
前回と同じくMETEXのテスタで、1分毎の充電電流値を記録したものです。
充電開始前のバッテリー電圧は3.3Vでした。
Ctimerを0.2μFとしているため、7時間を過ぎたあたりから10mAのままで変化しなくなりました。
グラフ 2
ダラフ1の充電後、しばらくしてから再度充電した時の電流変化です。
最初から少ししか電流は流れていません。
5時間22分で電流計が0となりました。
 グラフ1を見ると、データシートのような充電特性を示します。4時間20分くらいまでは定電流モードで充電していて、その後低電圧モードに移行しているようです。しかし、6時間以上たってもなぜかOFFになっていませんでした。
 Ctimerを0.2μFにすれば完全放電していても、満充電までできそうです。

 リチウムイオン電池にしてから、この掃除機もまだまだ頑張れそうです。モーターもかなり頑張って回っている感じになり、とても良好です。
 

 
Last up date 2008/3/7

 

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